牙城崩した 東京製鉄の鋼材がトヨタ水素エンジン車に採用されたわけ
自動車向けの鋼材の多くは高炉でつくられており、高炉メーカーの「牙城(がじょう)」とされています。ところがカーボンニュートラル(脱炭素)の流れが加速するなかで、鉄スクラップを原料とする電炉が注目を集めています。トヨタ自動車も、レース用の車両に電炉でつくった鋼材を採用しました。鋼材を供給した東京製鉄の西本利一社長に背景や展望を聞きました。
――脱炭素の動きが加速しています。
「菅義偉前首相が2020年10月、(50年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする)カーボンニュートラル宣言を行い、電炉鋼材を使いこなさないといけないという動きやムードが広がっています。当社にとって菅さんの発言は非常に大きく、鉄鋼の方向性を変えたと思います」
――どういうことですか。
「電炉の場合、1トンの鉄をつくる時に発生する二酸化炭素の排出量は約0.5トンで、弊社の場合は約0.4トンです。二酸化炭素排出量が(鉄鉱石をコークス還元する)高炉に比べると4分の1、5分の1ですみます」
――引き合いはどうですか。
「お客さんが鋼材を電炉材に変えることで、(部材の供給網を含めた)二酸化炭素の排出を大幅に減らすことができます。カーボンニュートラルに向けては自動車で例えると、クルマが走っている時や自社工場での製造時だけでなく、部材の供給網のことも考えないといけません。様々なお客さんから話がきており、トヨタ自動車もそのなかの1社です」
■脱炭素の波、クルマ向けで狙…