第2回相手の存在認め、深入りはせず 住民が信じる「梨泰院」という街の力
ソウル=清水大輔 河野光汰
「外にいるの? 大丈夫なの?」
150人以上の命が奪われたソウル・梨泰院(イテウォン)の雑踏事故が起きてから数時間がたった10月30日午前1時過ぎ。現場近くに住むオ・ミョンヒさん(68)は、ようやくつながった電話でこう話しかけた。「大丈夫だよ」。近くで暮らすおいのムン・ソンイクさん(31)から、普段通りの声が返ってきた。
オさんは事故現場付近から南側へ坂を下ったところで「四季不動産」という店を営んでいる。
「ここで暮らして40年。今でも、あの日の出来事が本当のことなのか、信じることができない」
1954年にソウルで生まれ、南部の釜山で育った。その中で目の当たりにしたのは、朝鮮戦争(1950~53年)で荒廃した国土が経済発展を遂げていく姿だった。結婚後の82年、梨泰院で縫製業をしていた妹に誘われてこの街にやってきた。
【連載】梨泰院 この街で
韓国・ソウルの繁華街「梨泰院(イテウォン)」で10月29日夜、ハロウィーンを楽しむために集まった人たちが狭い路地に密集し、雑踏事故で150人以上が犠牲になりました。あれから1カ月。事故に向き合う人たちに思いを聞きました。
「梨泰院」という国 住民が信じる街の力
妹や従業員がジャンパーやガ…