「自分でできる」自尊心が強い男性には ピンチを支えるチャンスに

有料記事

松本一生
[PR]

 自尊心や自負心が支えになることはあります。けれど、自尊感情ばかりが残ってしまうと、家族の介護負担が増える場合があります。そんなとき周囲はどうしたらよいのでしょうか。精神科医の松本一生さんがコラムで解説します。

    ◇

「会社を経営しています」と主張する認知症の男性

 多くの場合、人は自らの能力が低下してきた場合、「自分が変わった」と思う気持ちが入り乱れるものです。「望まないことは起きない」と考える無意識が働くのでしょうか。「いやいや、まだ大丈夫」と自信たっぷりの人もいます。今回は9年前に担当した認知症の人と家族に起きた話です。個人情報保護に留意して紹介しましょう。

 コロナ禍3年目の今では感染防止から対応が難しくなりましたが、9年前のこのエピソードの頃は、グループホームに入居を希望する認知症の人と家族が、事前に見学できるところもありました。当時の私はまだ妻の介護をしていなかったので、外来診療が終わった夕刻、往診に行っていました(個人宅と通院後に入居したグループホームにも行っていました。今ではそのような依頼には応じられないほど、妻の介護者になってしまいましたが……)。

 当時、私が担当して4年半になる中山英雄さん(仮名82歳、血管性認知症)は、個人事務所を構えて広告会社を営んでいました。彼は自分が経営者であり、自らもポスターをデザインするなど、会社の要となる役割はこなしている、と思っています。本当は経営については専務の弟が担当し、営業は2人の息子が20人の社員をまとめているのでした。

 毎朝、誰よりも早く会社に出勤して玄関の清掃をする中山さんは、それ以外の時間のほとんどを社長室にこもり、夕方まで新聞を読むだけの生活になっている自分には気づいていません。

妻の入院で、積み重なる息子たちの介護負担

 私のクリニックを受診しても…

この記事は有料記事です。残り1564文字有料会員になると続きをお読みいただけます。
今すぐ登録(1カ月間無料)ログインする

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません

【期間中何度でも15%OFF】朝日新聞モールクーポンプレゼント
松本一生
松本一生(まつもと・いっしょう)精神科医
松本診療所(ものわすれクリニック)院長、大阪市立大大学院客員教授。1956年大阪市生まれ。83年大阪歯科大卒。90年関西医科大卒。専門は老年精神医学、家族や支援職の心のケア。大阪市でカウンセリング中心の認知症診療にあたる。著書に「認知症ケアのストレス対処法」(中央法規出版)など