モドリッチが平和を訴える理由 W杯MVPの栄光と祖父殺された過去

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岩佐友
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 サッカー・ワールドカップ(W杯)カタール大会で準決勝に進んだクロアチアには絶対的なエースのモドリッチがいる。前回大会のMVPに輝いた37歳のMFは今大会も主将としてチームを引っ張る。幼少期には旧ユーゴ紛争に巻き込まれ、祖父を亡くし、爆撃がやんだ隙にボールを蹴る日々を送った。大会前に故郷を訪れ、そのルーツを探った。

 ごつごつとした岩肌の間を縫うように山道を上る。

 バルカン半島の西端、アドリア海に面したクロアチアの港町ザダルから車で40分。ベレビト山脈の斜面の道路沿いに、古ぼけた石造りの家はポツンと立っていた。

 屋根は燃やされて崩れ落ち、壁とさびれた配管が残る。時折、強い風が吹き、木々を揺らす音が静寂を破った。

 この家の主だったルカさんを悲劇が襲ったのは31年前のことだ。

 1991年12月、家から500メートルほど離れた草むらで、殺害されているのが見つかった。

 クロアチアがユーゴスラビアからの独立を宣言した年。これに反対するセルビア民族主義組織チェトニクによる犯行だった。

 突然の惨事に、悲しみに暮れた孫がいた。

 ルカさん宅から車で10分ほどの村に住んでいた当時6歳のルカ・モドリッチだ。

 その名を祖父から継いだ少年は、羊やヤギの放牧を手伝いながら、この家で遊ぶのを好み、多くの時間を過ごしたという。

 愛する祖父を失った時の思い…

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