何度も笑いがおきた10分間だった。
フィギュアスケートのグランプリ(GP)シリーズ第5戦NHK杯のフリーがあった19日。演技を終えた渡辺倫果(法大)が取材に応じた。ジャンプにミスはあったが、記者とやり取りする表情からは手応えが見て取れた。
「来季につながることが今季はできた。本当に飛躍の年だったんじゃないかな。シーズンが終わりそうな言葉になっていますけど」
まさに「飛躍」のシーズンになっている。
元々、GPシリーズに出場する予定はなかった。今季休養を発表した樋口新葉(明大)に代わって急きょ2戦に出ることが決定。10月の第2戦スケートカナダで初出場優勝を飾り、いきなり今季の主役候補に名乗りを上げた。
勢いそのままに、NHK杯が開幕する前日ごろまでは「『私が(GPシリーズ)2戦目って面白いなあ』っていう感じ」と気負いはなかったという。
だが、一気に高まった注目度と、突然視界に入ってきた12月のGPファイナル進出。直前でプレッシャーにのまれた。
「緊張するところまで緊張した」というショートプログラム(SP)では、冒頭の3回転アクセルで転倒。3回転ループは空中で体が開き、1回転に。演技後は腰に手を当て、うつむいた。9位だった。
「本当にどうしたら良いか分からない」。その夜、切り替えようと思っても、すぐにはできなかった。
立ち直るきっかけをくれたのは、周囲の言葉だった。
中庭健介コーチを通して、荒…

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