「貧困たたき」の怒りで挑んだ6年 地域に愛された50円食堂閉店へ

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黄澈
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 名古屋市中村区役所の一角で、おにぎりや総菜のほとんどを1品50円で提供してきた小さな食堂が、12月2日で営業を終える。来年1月の区役所の建て替え移転で、退去することになった。2016年8月の開業から6年余り料理を作り続けてきたのは佐藤秀一さん(54)。その日の売り上げを翌日の仕入れに使うような「自転車操業」を強いられた時期もある中で、なぜ続けてきたのか。原動力は「怒り」だった。

 店の愛称は「50円おにぎり食堂」。交番跡地を利用した店内は10人も入ればいっぱいだが、多くの人に愛されてきた。「50円」に抑えてきたのは、「生活が苦しい人も含め、誰もが普通に食事を楽しめる場所」にしたかったからだ。佐藤さん自身も30代のころ、路上生活を経験したことがあった。

 開業すると、「一人分の食事を用意するのは大変」と、ひとり暮らしのお年寄りが食べに来てくれるようになった。佐藤さんは「寄り合いみたいな雰囲気も出て、こんなのもいいな」と思ったという。

 「ヒジキが食べたい」などのリクエストに応えるうちに、総菜の種類が増え、親元を離れて生活している学生、子育て中の女性、生活保護を受けている人、地域で暮らす外国人と、客層も広がった。当初、一日に60個ほど用意していたおにぎりは、今では300個を超える日も珍しくなくなった。

「貧困たたき」への抗議で涙ながらに訴えたこと

 新型コロナウイルスの感染拡大、ロシアのウクライナ侵攻や円安に伴う食材の高騰など、厳しい条件が重なったが、佐藤さんは、何があっても店は続けるつもりだった。その覚悟を決めたのは、ネットを中心に生じた「貧しさを装っている」などの言葉をぶつけて攻撃する「貧困たたき」という風潮への怒りからだ。

 16年8月、NHKニュース…

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    清川卓史
    (朝日新聞編集委員=社会保障、貧困など)
    2022年11月30日12時25分 投稿
    【視点】

     「貧困たたき」への怒りを原動力に続けてこられたという「50円おにぎり食堂」。記事で紹介されているような「貧困たたき」が「炎上」する状況を、私自身も取材のなかで経験してきました。  根強い「貧困たたき」あるいは生活保護利用者に対する「生活