W杯大金星の瞬間、初めて手をつないだ 国も宗教も違う2人の苦悩

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ドーハ=江戸川夏樹
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 「君の国の近く、カタールでワールドカップがある。そこで会わないか」

 ベルギーのリロイ・ブロムさん(30)は提案する。国は違っても、互いにドイツ出身の歌手キム・ペトラスの大ファン。「ペトラスがかわいい。生き方に感動する」。ファンサイトでたわいのないチャットを楽しむ仲だった。

 そう提案したのは、チャットに書き込まれた言葉が気になったからだ。

 インターネットで知り合って1カ月半の頃だった。

 「ペトラスのような生き方ができる国はすばらしい」

 違和感を感じた。

 もしかしたら、彼は悩んでいるのではないだろうか。縮こまりながら生きているのではないだろうか。

 ブロムさんはLGBTQ性的少数者)。チャットの相手は、サウジアラビア出身。男性として生まれていた。

 ブロムさんにはこれまでにも、何人もの彼氏がいた。だが、国を超えて恋愛をしたことはこれまで一度もない。

 男性から女性へと性別適合手術を受けたペトラスのファンサイトには、トランスジェンダーとしての悩みを打ち明ける人も少なくない。その中で、サウジアラビアに住む彼(25)は、自分がLGBTQだとは一言も言わなかった。

 サウジアラビアは敬虔(けいけん)なイスラム教の国。同性愛はタブー視されている。彼はそれを気にしているのではないだろうか。

 ブロムさんは彼と会う約束をした。

 W杯の始まったカタール。待…

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