「選手甘やかしている」 社会問題に関わらない日本スポーツへの提言
ピッチ上での片ひざ立ち、国歌斉唱の拒否……。サッカーのワールドカップ(W杯)カタール大会では各国の選手たちによる「抗議活動」が目立つ。選手の政治的メッセージをどうとらえればいいのか。日本でこうした活動が広がらないのはなぜなのか。スポーツと現代社会の関係性について研究を続ける成城大の山本敦久教授(スポーツ社会学)に聞いた。
――今回のW杯ではイングランド選手の片ひざ立ち、イラン選手の国歌斉唱拒否などが世界中で取り上げられています。
「選手による政治的なアピールや人権問題に対する抗議活動は急に始まったわけではありません。今回の流れにつながるものでいうと、『Black Lives Matter(ブラック・ライブズ・マター)(黒人の命も大切だ)』という米国で広がった人種差別抗議活動。最もわかりやすいのはトランプ氏の存在です。トランプ政権下では人種差別が吹き荒れていた」
――その活動がスポーツ界に広がっていった。
「2016年に米国アメフト選手のコリン・キャパニックが、人種差別への抗議を込めて国歌演奏時にひざをついて起立を拒否し、これがバスケ界や野球界に広まっていきました。さらにグローバルに広がっていったのが、東京五輪・パラリンピックです。この片ひざ立ちのパフォーマンスが人種差別抗議活動の集合的な意識を象徴するパフォーマンスとして共有されていきました」
「もうひとつの流れはフェミニズム運動。これが大きなグローバルのうねりになりました。特に『#MeToo』運動が大きかった。スポーツ界は指導者による女性アスリートへのハラスメントの温床になっています。この運動が女性アスリートを勇気づけ、女性たちも性差別に対抗するようなアピールをするようになっていきました」
「さらに、性的少数者(LG…
- 【視点】
山本敦久氏によるこの提言を私たちは真摯に受け取らなければなりません。社会問題に向き合うどころから、自らの意見を口にしづらい閉鎖的な日本のスポーツ界は、世界のスタンダードからかけ離れています。日本サッカー協会の田嶋幸三氏の意見はまさにこれを象
- 【視点】
サッカー日本代表が、格上の強豪ドイツを撃破する「ジャイアントキリング」を成し遂げました。弱いものが強いものを打ち倒すのは痛快で、日本サッカーファンが熱狂するのも非常によく分かります。 こういったお祭り騒ぎのなか、カタールが抱える人権問題を