えっ、平成ってもう「レトロ」? 懐かしのグッズ 令和でも魅力
「大正ロマン」や「昭和レトロ」ではなく、いま流行しているのは「平成レトロ」という。今年のSNS流行語大賞にもノミネートされた。「平成ってもうレトロなの?」。平成5年(1993年)生まれの記者が疑問を胸に取材を始めると、懐かしのグッズに引き寄せられる人たちの話から、そのワケがぼんやりと浮かんできた。
日本一長い商店街として知られる天神橋筋商店街(大阪市北区)の南端から、歩いて約1分。長屋のような細長い建物の階段を上ると、喫茶バー「週間マガリ」がある。
棚や壁には、電子ペット「ファービー」や「スーパーファミコン」、キャラクターがあしらわれた鉛筆を転がして対戦する「バトルえんぴつ」など、懐かしの玩具や約2千冊の漫画、小説が所狭しと並ぶ。
「コンセプトは、友だちの家です」。店主の小西亮さん(33)が教えてくれた。
10代を過ごしたのは、平成真っただ中の1990年代末から2000年代にかけて。自分や友だちの部屋も、漫画やキャラクター人形、ゲーム機などであふれていた。
「この雰囲気が、知らない人との会話を生む、良いきっかけづくりになってます」
常連客の河野海香(みか)さん(30)も「小さいとき、お父さんがファービーを買ってきてくれたのを思い出した。懐かしい思い出が噴き出してきて楽しい気分です」と満足げだ。
続いてレトログッズを扱う雑貨店「PiNS!」(大阪市北区)に向かった。
店内の棚には昭和から平成にかけて企業が独自に作ったマスコットのぬいぐるみや、「ハローキティー」「けろけろけろっぴ」といった有名キャラクターが描かれた食器などが山のように陳列され、30年前にタイムスリップしたような雰囲気が漂う。
店主の塚本浩介さん(38)によると、00年前後に生まれた10~20代前半のいわゆる「Z世代」がいま、平成文化を「目新しいもの」として受け入れているという。
SNS上では「お正月を、写そう♪」のCMでおなじみだったインスタントカメラで撮った写真や、女子高生の間ではやったルーズソックスをはいた姿を発信する動きがある。
ツイッターで最も多く投稿された言葉を決める「SNS流行語大賞」でも、今年ノミネートされた30語に「平成レトロ」は入った。
「バブル崩壊前後の1980~90年代は、日本がまだ経済的に勢いのあった時代。企業は独自のキャラクターを山のように作り、電話機やゲームはめまぐるしく進化した。そういった物や変化にあふれた時代の雰囲気に、みんなワクワク感を覚えるのでは」。塚本さんはブームの背景をこう分析している。
実は、平成ブームには仕掛け人がいた。
「平成文化研究家」を自称す…