火迫り離した手…記憶ない父の最後 デパート104人死亡で五十回忌
堀越理菜 吉田啓
1973年に熊本市中心部で104人が死亡した「大洋デパート火災」の五十回忌の法要が29日、市内の明円寺で営まれた。当時を知る人が少なくなるなか、遺族や元従業員ら約50人が集まり、二度と惨事が起きないよう願いながら静かに手を合わせた。
火災は49年前の11月29日午後1時10分ごろに発生。大洋デパートの2階から3階にかけての階段で出火し、3~9階の1万平方メートル以上がほぼ全焼した。原因は不明とされる。
参列者の一人、原田真羊(みちよう)さん(51)は両親と買い物に訪れていた際に火災に巻き込まれ、父の美芳さんを亡くした。真羊さんを両手で上に持ち上げて避難させるため、母の幸子さん(84)が美芳さんとつないでいた手を離したのが最後となった。当時2歳半で、火災や父の記憶はない。父がどんな人だったのか、周りの人に聞いても埋まらないものがあり、ずっとつらい思いを抱えてきた。大量の煙を吸ったことで、平衡感覚などに後遺症も残ったという。
真羊さんは法要で遺族を代表し、「火災や災害は、どこでも誰でも一瞬で、一生のすべてが変わります。記憶を風化させることなく、自分の身に起こる教訓として役立てていただきたいと思います」と話した。
法要は、5年前に跡地で開業…