旅と地域貢献つなげ、移住に

佐藤靖
[PR]

 ふだんの旅と違い、旅先で地域の仕事を手伝ったり、地元の人たちと密に触れあったり、自分のできる地域貢献をして無料で滞在する。そんな交流拠点「TENJIKU(テンジク)富士吉田」が山梨県富士吉田市にオープンした。受け入れ先は地域と関わりを持つ「関係人口」の創出だけでなく、その先の移住にも期待している。

 ベンチャー企業「SAGOJO(サゴジョー)」(東京)と、企業向けクラウドサービスの開発・販売をする「キャップクラウド」(同)が連携して今月24日に開設した。SAGOJOによると、全国には奈良や鹿児島、埼玉などに拠点のTENJIKUがあり、同市の拠点は13カ所目で県内では初めてとなる。

 まず利用者はサイトで「旅人」として会員登録し、希望する拠点への利用を申し込む。1日あたり3時間前後、地域の仕事「ミッション」をこなせば、拠点のある宿泊施設に無料で泊まれるという仕組み。労働ではなく、あくまでボランティアの位置づけだ。

 同市では、富士山麓(さんろく)電気鉄道・富士山駅近くの短期滞在施設.work RESIDENCE(ドットワークレジデンス)に拠点を置いた。当面は、地域の魅力をSNSを使って発信したり、コワーキングスペースで運営の手伝いをしたりといったミッションが求められる。

 SAGOJOによると、全体の利用者は20代後半~40代が中心で、働く場所に制限の少ないフリーランスやテレワーカーが目立つ。地域の魅力を「ソトモノ目線」で捉え、自らのスキルやアイデアを地域に提供し、住民と交流しながら貢献できることに利点を感じる人が多いという。

 拠点の運営が始まった2019年以降、1200人以上が利用の応募をした。1回の滞在で平均3泊ほど。3人に1人がリピーターで、これをきっかけに移住した人もいるという。

 今後は、同社のIターンやUターンで移住した「地域案内人」が、利用者の滞在支援や地域住民とのつなぎ役となる。また、地域の困りごとを調べて、手伝いが必要な内容を仕事に加えていくという。

 案内人の1人、渡辺大輔さん(37)は同市の出身で、4年前に都内から戻った。現在はキャップクラウドの「コミュニティーマネージャー」を務めている。「昔に比べ、人が少なくなったと実感している。若者の遊ぶ場所がなくなった。どうにか地域への恩返しがしたい。一人でも移住して来てくれれば、うれしい」と話している。

 同市はこの仕組みを活用し、25年度までに10人の移住者を目標に掲げている。

 SAGOJOの社名は中国の古典「西遊記」の沙悟浄からとっており、「旅人」の三蔵法師が旅の目的地「天竺(てんじく)」に向かうのを支えていきたいという意味で命名されたという。(佐藤靖)

有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。

今すぐ登録(1カ月間無料)ログインする

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません