馬毛島の自衛隊施設計画 知事の容認ににじむ、国との足並み合わせ
県として理解せざるを得ない――。馬毛島(鹿児島県西之表市)への米軍機訓練移転と自衛隊基地整備計画に対して塩田康一知事は29日、県議会で理解する考えを表明した。環境影響評価(アセスメント)の最終結果がまとまる前の態度表明は、事実上の計画容認とも受け取れる発言をしてきた八板俊輔市長の姿勢を、知事が早々に受け止めたとも言える。
判断に至った理由について塩田知事は報道陣の取材に、国との「足並み」合わせもうかがわせた。アセスの最終結果を示す「評価書」の作成時期に関して「年内、あるいは年明けということも想定されるので、今のタイミングで県の考えを整理し、県議会で論議してもらう必要があった」と語った。
防衛省は準備書に対して出された知事意見を反映したうえで環境相らの意見をもとに評価書を作成し、公告・縦覧を経て年度内の本体着工をめざしている。塩田知事は「工事を進めるに当たり、(地元対応の窓口となる)連絡会や協議会などの体制を整えるという意味でも早い対応が必要だと考えた」とも説明した。
米空母艦載機が配備されている米軍岩国基地(山口県岩国市)に対し、同県と市、周辺自治体が連絡協議会を設けて事件・事故や基地の機能強化などに関して米軍の窓口である防衛省に申し入れをしていることを参考にしたものだ。こうした提案については八板市長は取材で謝意を示し、引き続き県と連携していくことをアピールした。
知事は、判断理由に西之表市が馬毛島の市有地売却を提案するなどの手続きを進めている状況もあげた。
こうした容認発言をめぐっては地元では「想定通り」との見方がもっぱらだった。西之表市の賛成派は「段階を踏まえて判断を示したことはありがたい」といい、ロシアのウクライナ侵攻などの世界情勢を踏まえ「年末に向けて計画は一気に進むと思う」との見方を語った。
反対派は逆にこうした情勢を念頭に「地元の意向を言い訳にせず、鹿児島県全体に及ぶ問題として、ちゃんと自分の考えを言ってほしかった」と話した。
西之表市はこの日開会した市議会定例会に、国が支給を決めた米軍再編交付金を活用する基金設置の条例制定を提案した。(具志堅直 加治隼人)
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