マスク氏とツイッター、買えること自体をどう考える 憲法学者の問い
宇宙ビジネス「スペースX」や電気自動車「テスラ」の経営者で、世界的富豪として知られるイーロン・マスク氏によるツイッター買収が話題を呼んでいる。民主主義を支える情報基盤に成長したプラットフォームが、巨大な富の力で、いとも簡単に買収されてしまう現実をどう考えたらいいのか。「富の集中」を民主主義の観点からいかに統制すべきかを研究する、木下昌彦・神戸大学教授(憲法)に聞いた。
――マスク氏によるツイッター社の買収を、どうご覧になっていますか。
「1人の人間が、ツイッターのような公共的なプラットフォームを簡単に買収できる巨額の富を持っていること自体が、根本的な問題ではないでしょうか」
――それは資本主義社会が想定していることではないのですか。
「確かに、富を獲得する機会はすべての個人に平等に与えられており、個人の努力や能力によって誰でもその富を獲得できる、という主張があります。すごく活躍した人に経済的な恩恵を与えることで、インセンティブが生まれ、経済が発展する、と」
「そういう側面は否定できませんが、それが極端になって経済的支配力が集中すると、消費者にとっての利益だけでなく、民主主義の持続性や個人の自由の保障という憲法的な価値を損なうリスクが生まれてきます。極端な富の集中は、資本主義としては想定されますが、民主主義として想定できるものかどうかは別途考えなければなりません」
――具体的にどういうことでしょうか。
「多くの人が忘れていますが…