「リモートデモクラシー」の時代に 識者が読み解く地方選挙の新潮流

統一地方選挙2023

聞き手・高橋淳
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 11月20日に投開票があった千葉県松戸市議選は、定数44に対して64人が立候補する混戦となった。地方選挙に詳しい法政大大学院の白鳥浩教授は、高齢者が選挙の中心となる「シルバーデモクラシー」から「リモートデモクラシー」と呼ばれる新しい潮流が結果から見て取れると指摘する。来春の統一地方選に向けて、今回の選挙を読み解いてもらった。

 ――9人が立候補した6月の松戸市長選に続いて、今回の市議選にも注目していたそうですね。

 「これまでの選挙のあり方が大きく変わりつつあることをうかがわせる、興味深い結果でした。維新、参政、NHK党など組織を持たない政党が擁立した候補者全員が当選した一方で、共産、立憲など強固な組織を持つ政党で候補者が落選しました。また、長らく当選を重ねてきた保守系のベテランも複数人が議席を逃しています」

 「高齢者が選挙の中心となる『シルバーデモクラシー』と呼ばれた状況が一変し、『リモートデモクラシー』ともいうべき新しい流れが生まれています。来春の統一地方選の先行事例になると思っています」

デジタル駆使した選挙の時代

 ――リモートデモクラシーとは何でしょうか。

 「これまでの選挙では、組織的に有権者を動員できる候補者が圧倒的な主流派でした。しかし、コロナの影響で、集会や握手など定番の選挙活動がしにくくなりました」

 「今回の選挙をみると、SNSやズームなどリモートを駆使した候補者が勝ち抜いている。ブログなどでの発信力がある人も強い。デジタルを使って日頃から政治の情報にアクセスしている無党派層の有権者をうまく取り込んだ候補者や、組織に頼らない政党がむしろ存在感を示しました」

 ――松戸市特有の状況はありましたか。

 「6月の市長選から半年を切る中での市議選。7月には参院選もありました。この選挙同士のインターバルをうまく利用し、市長選や参院選に立候補して知名度を上げた前市議たちが比較的上位で当選しています。市長選に初挑戦した新顔もやはり初当選を果たしました」

 「一方で、この短期間に選挙が続いたため『選挙疲れ』があったと思います。また、コロナが第8波に入り、高齢の方を中心に投票を控える動きがあった可能性がある。投票率34・82%は過去最低でした」

 ――定数の約1・5倍の候補者が出る混戦でした。

 「過疎地などと違い市議の待遇が良く、都市型の選挙で浮動票も期待できる。供託金の30万円を用意できれば、それぞれの主張を社会に示すことができ、44位以内に入ればいいのだから、当選を期待する気持ちも生まれやすいのでしょう。4年前にNHK党が議席を獲得したことでも分かるように、まったく新しい政党がアピールしやすい地域だと思います。それぞれの訴えをみると、福祉や介護、子育てなど暮らしに身近で切実なものが多いとも感じました」

 ――統一地方選の先行事例になるのでしょうか。

 「ワクチンの接種スピードなどコロナ対応をめぐって自治体間に格差が生まれるなどコロナ禍の2年半で多くの有権者が地方政治の大切さを痛感したと思います」

 「こうした中でデジタルを駆使した選挙の時代がやってきて、有権者にとってはかつてに比べて格段に判断の材料が増えました。従来型の組織が我々が思うほど絶対的でないことも明らかになった。『選挙に行っても変わらない』とあきらめるのではなく、政治的な情報に積極的にアクセスし、投票に臨んでほしいと思っています」(聞き手・高橋淳)

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〈しらとり・ひろし〉 1968年生まれ。専門は現代政治分析。英国オックスフォード大学客員フェローなどを歴任し、現職。

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 〈松戸市議選〉 党派別では自民5人、立憲4人、維新2人、公明10人、共産4人、社民1人、N党1人、参政2人、無所属15人が当選した。新顔は12人。維新と参政は同市議会で初めての議席を得た。

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