第34回父のことばかり話した寂聴さん 小説を書こうと決めた井上荒野さん

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岡田匠
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井上荒野さんに聞く④

 瀬戸内寂聴さんは2014年、背骨の圧迫骨折や胆囊(たんのう)がんで寝たきりのような状態だった。翌15年、井上荒野(あれの)さん(61)が京都・嵯峨野の寂庵(じゃくあん)を訪ねると、寂聴さんは荒野さんの父の井上光晴さんのことばかり話した。「父のことがすごく好きだったんだなあ」。荒野さんは『あちらにいる鬼』を書こうと決めた。

 ――『あちらにいる鬼』を書くきっかけは何だったのですか。

 母が亡くなってしばらくして、編集者から「お父さんとお母さんと寂聴さんの関係を書いてみませんか」と提案がありました。「絶対に嫌だ、そんなの」って言ったんです。身内のスキャンダルで話題を呼ぶようなことを書きたくなかったし、寂聴さんがご存命だったので「そんな恐れ多いこと、とてもできないよ」と拒否していました。

 ――寂聴さんが15年に活動を再開した頃のことですよね。

 ずいぶんと体調を崩していたので、今、会いに行かないと、もう会えないかもしれないという気持ちになり、作家仲間の江國香織さんと角田光代さんを誘って寂庵にお邪魔することにしました。3人で、よく飲んでいるんです。江國さんも寂聴さんと親しかったので声をかけたら、角田さんが「私も一緒に行きたい」と言ってくれました。ちょうど角田さんは源氏物語の現代語訳を始めるときで、大先輩に会いたいということだったんです。

 ――15年6月に寂聴さんが朝日新聞で連載「寂聴 残された日々」を始めました。初回が「女流作家の訪れ」というテーマで、3人のことを書かれています。

記事の後半では、井上荒野さんの父・光晴さんについて、不倫相手だった寂聴さんが語った様子が紹介されます。

 寂庵に行ってみると、寂聴さ…

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