第38回「きっちり生きた」寂聴さん 「生きることに執着した」井上光晴さん
井上荒野さんに聞く⑧
『あちらにいる鬼』を書いた井上荒野(あれの)さん(61)は、瀬戸内寂聴さんは最期まで「きっちりと生きた」と感じている。父の光晴さんは「生きることに執着」し、母は「着々と死んでいった」と思う。3人にみる生と死とは。
――寂聴さんから不倫や愛について聞いたことはありますか。
いろいろなところでおっしゃっていますが、「恋は雷に打たれたようなもの」かなあ。「だれかを好きになるって、どうにもならないことですよ」と語っていました。
――「あの世に行ったら、愛した男たちが迎えにきてくれて、最初に誰の手を握ろうか迷っているの」と笑っていました。
そうそう、今ごろ、愛した男たちと飲んでいるんじゃないかな。何度も「長く生きすぎた」と言っていました。「すごく好きだった人も、すごく嫌いだった人も、みんな死んじゃった」と。
孤独だったと思います。ただ、悲観的な孤独ではありません。最後まで本当に「生きていた」という感じですよね。死ぬときまで、きっちりと生きていました。おいしいものを食べ、話したいときは誰かとしゃべって。「みんな死んじゃった」と言っていましたが、それも楽しんで言っていた印象があります。
――まさに、生き切った99年の生涯と言えます。
寂聴さんは死ぬ間際まで、着…