ウクライナに侵攻したロシア軍が11月にかけて、南部ヘルソン州などドニプロ川西岸地域の数千平方キロの占領地から撤退した。
解放された同州などの村々を訪ねた。気の遠くなりそうなほどの数の地雷を撤去するウクライナ兵や、ロシアの占領中に拷問にあったという男性にも会った。
ヘルソン州の小村ビソコピルリャで会ったのは、老人ホームの職員シトラーナ・ベレズカさん(60)だ。占領下でかくまっていた、ある若いウクライナ兵の無事を願っていた。
戦火のなか、老人ホームにやってきた若い負傷兵
占領下の7月、若い負傷兵を抱えたウクライナ兵が、ベレズカさんが働く老人ホームのドアをたたいた。この日、村では激しい銃撃と爆発の音が響いていた。
ドアを開けたベレズカさんに、兵士は「夕方には戻る」と告げ、若い負傷兵を残して去った。
ウクライナ兵をかくまっているとわかれば、自分の命も危険にさらされる。
だが、ベレズカさんは迷わなかった。老人ホーム敷地内にある、平屋建て倉庫の奥の部屋にかくまった。
ベレズカさんに、負傷兵を「夕方迎えに来る」と言ったもう一人のウクライナ兵は結局、戻ってこなかった。
ウクライナ軍は当時、ヘルソン州など「南部奪還」を目指して攻勢をかけ始めた頃で、ビソコピルリャはその最前線だった。この時の奪還作戦は成功を収めず、ウクライナ軍は撤退していった。
負傷兵はベレズカさんに「サーシャ」と名乗った。25歳で、ウクライナ南部ドニプロ市出身だという。
ベレズカさんは「息子」と呼…

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