小柄でかわいらしい倉本信子(19)は教員になるための試験会場で、ノートを見返していた。
前の席の青年に声をかけられた。
背が高く、色白で整った顔立ちをしている。
二言、三言、励まし合った。
再会は、東京・お茶の水であった本試験。
試験後、なんとなく2人で一緒に帰ることに。
恋の始まりだった。
家が貧しく英語を独学で学んだ青年と、日系移民2世で13歳までハワイで育った信子。
2人は広島で英語教師をしながら、休日は本屋を巡ったり、散歩したり。
6年の交際後、青年の経済状況から反対する周囲を押し切り、結婚。
2人の娘に恵まれた。
しかしその後、日本の戦況は悪化する。
一家をおそった「地獄」を、信子は戦後、米国のニュース誌「TIME」に宛て、書いた。
《私は5時半に起きて朝食の支度を整え、二階で眠っていた夫と娘たちに、階下に下りてくるよう声をかけた。》
おびえて泣きわめく次女 母は立ちつくした
朝食を終えると、長女の洋子…