車いすだと看護師になれない? 「私はチャンスがほしい」女性の情熱
11月19日の午後。大阪府富田林市に住む桂真梨菜さん(29)は、憧れだった看護師になるため、専門学校の入学試験に臨んだ。
20分あまりの面接試験。桂さんは面接の担当者たちに自分の熱意を伝えた。
「私は車いす生活になるとき、1年2カ月ほど入院しました。患者としての経験を生かし、私だけにできる、患者に寄り添った看護をしたいのです」
6日後。合格者がホームページで発表された。
受験番号はなかった。
「『車いすの人にはムリだ』と判断されたのであれば、残念です」
専門学校の事務長は取材に対し、「入試については問い合わせを一切お断りしています」とした。
桂さんは問います。車いすの人が看護師になる道はないのでしょうか――。
桂さんは幼いころ病気がちで、よく病院に行った。ナース服を着た人たちに憧れた。幼稚園の卒園文集には、こう書いた。
「わたしは、かんごしさんになりたいです」
中学ではソフトボール部で汗を流した。高校は野球部のマネジャーと飲食店でのバイト。青春を楽しんでいたが……、気づいた。
〈看護師になるには学力がいる。このままではアカンぞ〉
高校を卒業し、病院で看護助手として働きながら准看護師(准看)の資格をとる勉強をした。入浴や食事の介助、おむつ交換……。助手に許されていることは何でもこなした。
2017年4月、桂さんは24歳で准看の資格を取った。ちょうど結婚した時期。出産して、改めて看護師を目指すことにした。
まさか出産が……。
結婚した年に妊娠し、出産し…
- 【視点】
最近「ダイバーシティ&インクルージョン(diversity & inclusion, D&I)」という言葉を見かけるようになりました。多様性を意味するダイバーシティでは女性や障害者、外国にルーツのある人などの受け入れを、インクルージョンは時
- 【視点】
「あなたが事故に遭って脊髄(せきずい)を損傷し、人生に絶望しているとします。そのとき、すぐ横で、車いすの人が看護師になって働いているのを目の当たりにしたら、希望になりませんか」 記事で伝えられる桂さんの言葉です。この場面を想像したとき