「息子」名乗る電話、本当の息子は庭に 「だまされた振り」続けたら

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中川史 高橋俊成
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 「郵便受けにはがきが来ていなかった?」。愛知県豊田市の女性(60代)は自宅で受けた電話で、男にそう言われた。隣で暮らす息子の声に似ている気がして、やりとりを続けることにした――。

 電話があったのは、8月30日の正午前。男は、郵便受けを見てきてくれという。「見に行くけど、後で携帯(電話)にかけるよ」と答えると、男は「携帯は壊れている。今日は一日中、家にいるの?」とたずねて電話は切れた。

 《変なことを言うな》と思った。

 次の電話で、男は仮想通貨を話題にしてきた。「友だちと3人で1500万円もうかった。おカネを預かってもらえる?」。女性は怪しさを覚えた。《そんなうまい話はおかしい》。「大金を預かるのは怖いよ」とやんわり断ったが、「悪いおカネじゃないから」ととりつくしまなく、2度目の電話も切れた。

 男は、「女性の息子」になりすましたつもりだったが、実の息子は午後からの出勤に備えて自宅の庭にいた。

 女性が庭の息子に向かって、「なに、仮想通貨だって?」と問いかけても、息子は困惑した表情をみせた。「1500万円、もうかったって言ったじゃん」と念を押すと、息子は「それは詐欺だよ」と見抜いた。警察に通報し、駆けつけた署員から「だまされた振り作戦」への協力を求められた。

 また電話が鳴った。「もうかったおカネが脱税になる。弁護士に書類を作ってもらうのに250万円用意したい。いくらある?」と聞いてきた。横にいる捜査員の指示を受けながら、午後3時ごろまで電話が続いた。

 詐欺グループの「受け子」とみられる男が女性宅の近くに現れたと聞いた。捜査員が職務質問をして、名古屋市中川区内で起きた同様の詐欺事件に関与した疑いで検挙された。女性は「仲間がいるから怖いなと思いましたが、検挙と聞いて、ほっとしました」と振り返る。事件後、自宅の電話を留守番電話の設定に変えたという。

 女性は11月に豊田署で感謝状と報奨金1万円を受け取った。報奨金は、県内のコンビニエンスストアや金融機関、警備業協会などでつくる「愛知県特殊詐欺撲滅プロジェクトチーム」が全国に先がけて昨年7月から始めたもの。捜査に協力したり、有力な情報を提供したりした人に支払われる。(中川史)

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