主婦が寄付するケースは? 新法の家族救済の仕組み、パターンで検証

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寺田実穂子
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 家族が宗教団体に多額の寄付をつぎ込んでしまった結果、他の家族が困窮してしまったら――。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)をめぐって浮かび上がった問題に対応するため、政府がまとめた新法案では家族の被害救済の仕組みも盛り込みました。

 「憲法違反にならないようぎりぎりの制度にした」(政府関係者)という仕組みは、どのような理屈で成り立っているのか。使い勝手はいいのか。被害者支援に取り組む弁護士の協力の下、様々なパターンを想定しながらチェックします。

 新法では、霊感商法のような悪質な寄付勧誘の行為を明示して禁じ、そうした勧誘で行われた寄付は取り消せるようにする。一定の条件の下、子どもや配偶者にも認め、家族がした寄付を取り戻せるようにする。

 その場合、お金は全部戻ってくるのか。

 答えはノーだ。子どもらが本来受け取れるはずの養育費などの分だけしか請求できない仕組みになっている。

 なぜか。

 元来、自分のお金を何に使うかは本人の自由だ。憲法も財産権として保障している。家族とはいえ、寄付をした人の意思表示を直接第三者が取り消せるような仕組みは、憲法違反になってしまう恐れがある。

 そこで政府は、民法の「債権者(さいけんしゃ)代位(だいい)権」という制度を使うことにした。

 どんな制度なのか。

 登場人物はお金の貸し借りの関係がある3人。AさんはBさんに、BさんはCさんにそれぞれお金を貸していて、そのお金を返してもらう権利(債権)を持っている。

 ここでBさんに返済能力が全くない場合、Aさんが第三者のCさんに対してBさんへの借金分を請求できる権利が債権者代位権だ。BさんがCさんに返済を請求していないため、代わりに行使する形になる。この場合だと、AさんがBさんに貸していた50万円分だけCさんに請求・回収できる。

 この考え方に立って、信者とその家族、教団の三者の関係を整理したのが、政府の家族救済案だ。

 たとえば、教団への過剰な寄付によって子どもが養育を受けられなくなった場合、養育費をもらう権利を保全するために、教団にお金を請求できる、ととらえる。

 ただ今の仕組みでは現在までの養育費しか請求できないので、新法で将来の分も請求できるように特例を作った。

 子どもや配偶者が、養育費や婚姻費用を払ってもらう権利をもとに、寄付の取り消し権を代わりに行使し、返金を請求する流れが想定されている。

 しかし、全国霊感商法対策弁護士連絡会の阿部克臣弁護士は「旧統一教会の問題に関しては、救済するには制度上の限界がある。要件が厳しい上に、効果としても限定的なので救済にならない」と指摘する。

 その理由の一つが、「専業主婦の妻が、夫が稼いだお金を管理している間に、寄付をしていたというケースが多い」という実態だ。

 専業主婦で信者の妻と、年収500万円の会社員で信者でない夫の場合を考える。

 夫が妻に対して請求できる婚…

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