「一番に決まっている」 スーパードライのタブー破ったアサヒの科学
お店に入ったら「まず、ビール」。
そんな光景は、少しずつ遠ざかっているのかもしれません。
国内のビール系飲料の市場はここ20年近く、縮小の一途をたどっています。日本一売れるビール「スーパードライ」を持つアサヒビールにとって、決してひとごとではありません。
勝ち残りに向けて、看板商品のスーパードライを思い切ってリニューアルして反転攻勢を仕掛けつつ、新たにノンアルコールや低アルコールの飲料市場を開拓しようとしています。
ビールとノンアル――。一見すると正反対のようにも映ります。グループを束ねる親会社アサヒグループホールディングスの勝木敦志社長に、そのねらいを聞きました。
――6月、ノンアル・低アル飲料に特化したバーを東京・渋谷のセンター街に開きました。SNSの写真映えするドリンクを用意し、20代の女性が多く来店していますね。
「私も訪問し、綿あめが上にのっかったアルコール度数0・5%のドリンクを飲みました。来店客数をみると、想定以上の手応えがあります。顧客のデータを活用し、新しい商品の開発につなげたい。お酒を飲める人にとっても飲めない人にとっても、多様な飲み方の選択肢を用意する『スマートドリンキング』という私たちの取り組みを、SNSなどを通じて広げていきたいと考えています」
――2年前からスマートドリンキングの取り組みを進めています。
「20~60代の人口8千万人のうち、日常的にお酒を飲むのは2千万人です。これに対して、月に1回程度飲むのが2千万人、残る4千万人は飲めるけど飲まなかったり、体質的に飲めなかったりします。日常的に飲まない人たちにノンアル・低アル飲料を、うるおいや豊かさ、楽しみをもたらすツールにしてほしい」
「ただ、特にビールテイスト飲料『ビアリー』(21年発売、度数0.5%)は日常的にお酒を飲む人が手に取る傾向があります。より裾野を広げたいと思っています」
――そもそもお酒を飲む人は減っているのですか?
「なんせ人口が減少しているので、確実に減ってきています。若い世代になるほど、お酒を飲む比率も下がっています。今後、お酒を飲む人は、人口が減る以上にはやいスピードで減っていくのです。若い世代をみると、私たちのライバルは競合他社の商品ではなく、スマホやゲーム。お金や時間の奪い合いなのです。私たちの世代は楽しみの8割をお酒が占めていたんですが(笑)」
――価値観の変化ですね。
「従来型の商品の量を追求す…
- 【視点】
記事とは直接関係しませんが「科学」という言葉の使われ方に驚きました。 「スーパードライは世界最高のビールで、変える余地はない」というこれまでの常識を疑い、他社と比較してみること。 これは「科学」というより、「相対化」だと思うので
- 【視点】
ビールは2020年秋に酒税が減税となって割安となったことに加えて、コロナ禍で家飲みが進んでビール回帰の動きもありました。今年10月に各社が値上げした際には、値上げ前の駆け込み購入が目立ちました。ここ数年続く食品値上げの中では顕著な動きでした