幻の白いシカが導いたフォトコンテスト最高賞 北海道の佐藤圭さん
国内有数の規模と歴史を誇る第70回ニッコールフォトコンテストの最優秀作品賞「長岡賞」に、北海道留萌市の佐藤圭さん(43)の作品「生命萌(も)ゆる」(3枚組み)が選ばれた。5回目の挑戦で手にした最高賞に「夢のようだ」と喜びを隠せない。
同コンテストはプロとアマの枠を超えたコンテスト。今回はモノクロームやカラー、ネイチャーなど4部門に計2万4327点の応募があり、各部門の大賞の中から7人の審査員によって長岡賞が選ばれた。佐藤さんの作品「生命萌ゆる」は冬のサロベツ原野が舞台で、厳しい寒さの中でたくましく命をつなぐキタキツネ、オジロワシ、エゾシカを捉えた。
サロベツ原野は北海道北部の豊富町と幌延町の日本海沿岸に広がる。佐藤さんは珍しい白いエゾシカを撮影するため、原野の北部まで片道約130キロを何度も通った。白いシカになかなか会えず落ち込んでいたとき、夕暮れ時のマジックアワーに浮かぶ利尻島の利尻富士や野生動物たちの営みが心を癒やしてくれた。「どの場面も一瞬で変化してしまう光景。構図を決める決断力が試されました」
特に印象に残る一瞬は、夕方に白いシカに出合った直後の光景だ。振り返ると、大きく傾いた太陽の光が雲の切れ間から放射状に雪原へ降り注いでおり、「神がかったものを感じた」という。
美容室を経営しながら大雪山系などに通い、エゾナキウサギやクマタカなど野生動物を撮影してきた。エゾシマリスの写真集も出した。同コンテストではこれまで、滑空するエゾモモンガ(4枚組み)、至近距離から捉えたオジロワシとオオワシ(2枚組み)がネイチャー部門で大賞に次ぐ2席を獲得したのが最高だった。
佐藤さんは「日本全国の実力者が競う長岡賞はまさに夢の賞。白いシカがもたらすといわれる幸運がこの賞だったのかもしれない。満足することなく、世界で活躍できる写真家を目指していきたい」と話している。(奈良山雅俊)
有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。