東京都杉並区の高円寺氷川神社に、住み着いた一匹の三毛猫がいた。「ミケさん」と呼ばれていた。
宮司で猫好きの松井美加子さん(57)が面倒を見てきたが、生前、一度も触らせてはくれなかった。だが不思議と、境内にもう一つある「気象神社」で晴天祈願をする際は、近くでうずくまって過ごしていた。
そんなとき、松井さんは心の中で声をかけた。
“これからおはらいよ”
ミケさんからも、“がんばってね”と言われた気がした。「見守ってくれている感じがあって、特別な猫さんでした」
出会ったのは2010年ごろ。生後間もない大きさで、母猫ときょうだい3匹が一緒だった。母猫やほかのきょうだいたちはいつしか姿を見なくなり、三毛猫1匹だけになった。
主な居場所は本殿の軒下。社殿の明かり取りでひなたぼっこをしたり、気象神社の小さな階段を軽快に上り下りしたり。常連の参拝客にも知られる存在になっていった。
最期の姿もまた、松井さんに特別な印象を残すものだった。
17年12月3日。ミケさん…