保育士1人で4歳児30人の重圧 変わらない配置基準、現場に絶望感

田渕紫織
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 保育士1人で、1歳児なら6人、4歳児なら30人――。保育士1人あたりみてよい子どもの数は、国の「配置基準」で定められている。現場は、この基準では子どもの安全を守れないと指摘。約10年前に政府は見直しを約束したが、いまだに実行されていない。(田渕紫織)

 現場では、保育士たちがギリギリの状態で保育を続けている。

 茨城県認可保育園に勤める女性保育士(29)は、コロナ禍で3歳児クラスを担当した際、20人の子を1人で保育した。国の配置基準ギリギリの人数だ。

子どもに謝ってばかり

 一つ間違えば重大な事故につながりかねない「ヒヤリハット」は日常茶飯事。

 子どもたちが隙を見てベランダに出ていたり、おもらしした子をケアしている間に別の子が机の上に乗ろうとしていたり。アレルギー児が他の子のごはんを口に入れてしまったりしたこともあった。

 自身は夕方までトイレに行く暇がなく、膀胱(ぼうこう)炎になったこともある。

 隣の4歳児クラスでは、1人で30人近い子どもを見ていた2年目の同僚が忙しさと重圧で心を病み、出勤できなくなった。

 心身をすり減らした同僚たちは、「とてもこの生活を続けられない」「心も体も壊れる」などと毎年3~5人辞めていく。そのたびに若い保育士を採るため、経験が浅い保育士ばかりになってしまう。

 床にひっくり返って大泣きしたり、抱っこをせがんだり、「聞いて聞いて」と言ったりする子たちに応えてあげたいが、手が足りなくてできず、気づけば「ごめんね。ちょっと待ってね」と謝ってばかりいる。

 園長に窮状を訴え、改善を申し入れても、「国の配置基準には足りています」と繰り返されるばかりだ。

 今年9月、静岡県認定こども園のバスに置き去りにされた3歳児が亡くなった後は、保育士の配置基準の低さにも改めて焦点が当たった。

 しかし、決まっていくのはバスへの安全装置の設置義務付けやマニュアルの整備で、それを実行するための人手をどうするかは聞こえてこない。「肝心な基準はずっと変わらないまま。私たち現場と社会でこんなにギャップがあるのか」と絶望感が募った。

小学校は変わったのに

 元小学校教員だった横浜市の女性(68)は、退職後に保育士に転じ、保育園の配置基準の低さに驚いた。

 勤める認可園で最初に入った乳児クラスの給食の時間には、乳アレルギーの子をケアしつつ、他の子たちが食べるのを手伝い、こぼした飲み物を拭いた。次元の違う忙しさだった。

 これでも、横浜市は国の最低基準より高い基準を独自に置いている。それができる余裕のある自治体ばかりではないとも聞く。

 小学校は昨年、約40年ぶりに40人学級から35人学級へと踏み出した。

 「かつて自分の子も保育園に預けていましたが、ここまで大変だとは気づかなかった。実情がもっと表に出て改善されるべきです」

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