旧統一教会問題への対応、宗教者にはどう映るのか 釈徹宗さんに聞く

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聞き手・岡田匠
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 世界平和統一家庭連合(旧統一教会)へ「質問権」が行使され、被害者救済新法の法案が国会で審議される。こうした動きは、信仰に生きる識者にはどう映っているのか。浄土真宗僧侶で宗教学者、相愛大学学長の釈徹宗(しゃくてっしゅう)さんに話を聞いた。

     ◇

 ――旧統一教会の問題をどう捉えていますか。

 「旧統一教会は宗教教団だが、政治・商業カルトでもある。詐欺まがいの商法ともいえる反社会的な手法で高額な献金をさせてきた。大規模なカルト宗教問題だと考えている」

 「信教の自由基本的人権だ。一般常識からすると奇異だ、滑稽だという価値観を持っている宗教でも、その人が真面目に信仰していれば尊重しなければならない。しかし、集団で反社会的な活動をし、非人道的な手法でマインドコントロールする場合、社会は声を上げなければならない」

 ――反社会的な活動の線引きは。

 「多くの訴訟を抱えているか、被害者の会が結成されているか、結成されていればどんな活動をしているのか。また、正体を隠して活動しているとか。そのあたりが目安の一つになるだろう」

 「ただ、宗教は社会のものさし、一般常識のものさしで測れない。短期間で判断できないケースもある。まずは今言った目安を手がかりに判断すること。そして、その教団が社会と関わろうとしているか、信者の幸せを考えて活動しているか、ほかの宗教と対話しようとしているか、このあたりは時間をかけて観察すればわかる」

権力介入のプロセス 透明化を

 ――今回の質問権行使はどうでしょうか。

 「旧統一教会の問題は特殊ケースといえる。全国霊感商法対策弁護士連絡会の活動を知っているし、被害者の気持ちや窮状を考えれば、一刻も早い手続きを希望する。私も発起人のひとりとなって、宗教研究者有志による『旧統一教会に対する宗務行政の適切な対応を要望する声明』を10月24日に出した。旧統一教会問題は、被害者・支援者がもう何十年も取り組んできたものである。と、同時に、この案件をステップとして、権力介入のプロセスをいかに透明化するかが重要だ。この機に段階を整理したほうがいい」

 「一般的な場合、質問権を行使した後、その宗教法人を監視対象に指定して様子を見てはどうか。改善が見られなかったら最終的には解散命令請求をする。この段階ならこういう措置ができる、というのを整理したらどうか」

 「事案ごとに解釈を変えると、不当な権力の介入につながり、基本的人権を侵すことになる。今回の問題を機に、権力による恣意(しい)的な運用がないように、透明化、要件の明確化、段階の設定をオープンに議論すべきだ」

 ――今回の問題が将来的に、ほかの宗教法人に影響を及ぼすという不安もあります。

 「旧統一教会ほど長年、多くの訴訟を抱え、相当な被害者がいるケースはまれだ。今回の対応をほかの宗教法人にただちにあてはめることは考えにくい」

僧侶であり宗教学者の立場から旧統一教会問題と政治の対応を見つめてきた釈徹宗さん。インタビューは、宗教における寄付・献金の意味や規制のあり方、「宗教2世」の問題、宗教教育の必要性へと続きます。

 ――そもそも献金、お布施は…

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