ジョージア州、また決選投票なぜ? 南北戦争以前から残る差別の影
11月8日の米中間選挙から1カ月近くが経った今も、上院100議席のうち1議席がまだ決まっていません。南部のジョージア州で民主党、共和党の候補が大接戦をくり広げ、今月6日に決選投票が行われることが決まったためです。ジョージア州では2020年の上院選でも決選投票になりました。共和党が強い「赤い州」のイメージが強かったジョージア州で、いったい何が起きているのか。同州アセンズにあるジョージア大学に留学経験がある埼玉大の宮田伊知郎教授(アメリカ研究)に聞きました。
――ジョージア州といえば、映画「風と共に去りぬ」の舞台として有名ですが、そもそもどんな州なのでしょうか。
「風と共に去りぬ」に関係する場所は、日本人にもとても人気ですね。州都アトランタにはコカ・コーラ社の本社があります。デルタ航空のハブ空港にもなっているハーツフィールド・ジャクソン・アトランタ国際空港なども、日本人にはなじみがあるかもしれません。
日本とのかかわりでいうと、ジョージア州は鹿児島県と「姉妹盟約」を結んでいます。それぞれ南北戦争(1861~65年)と西南戦争(1877年)という戦いを経験しています。実は、この南北戦争がジョージアの政治を理解するのにとても重要なんです。
――どういうことでしょうか?
南北戦争以前、ジョージア州は黒人奴隷を使った綿花産業が栄えた裕福な州でした。当時の米国は農業大国で、綿花を欧州に輸出して富を得ていました。その中心となったのがジョージア州です。
そのころ、米西部の土地をどう利用していくかをめぐり、米北部と南部の州が対立していました。欧州からの移民をたくさん抱えていた北部の工場経営者らは、西部の土地では奴隷を持たず、移民たちが農業で生計を立てられるようにしたいと思っていました。一方、南部の州は奴隷を使い、綿花やタバコ栽培を拡大したいと思っていました。
北部州の考えを代表していたのは当時の共和党で、そこからリンカーン大統領が誕生します。リンカーンは奴隷制度をよく思わなかった政治家で、当時の共和党は奴隷制度に反対していました。南部州の白人たちは危機感を覚えます。
――今の共和党の保守的なイメージとは違うんですね。
その通りです。このころは、南部でなく北部で共和党への支持が厚かったんです。
誤解されがちなのですが、奴…