梨泰院事故と日本 鈴木謙介さんの描く「安全な熱狂」の社会とは?
ソウル・梨泰院(イテウォン)の雑踏事故から日本社会は何をくみ取ればいいのか。「カーニヴァル化する社会」の著書がある社会学者の鈴木謙介さんに聞くと、「いまの日本は『安全な熱狂』を求めている」という答えが返ってきた。いったい、どういうことだろう。(聞き手・小村田義之)
――梨泰院の雑踏事故を見て、そこから何を考えますか。
「なぜあのような事故がソウルで起きるかといえば、韓国社会特有の文脈はあるのかな、と。若者に人気の街が4、5年おきにごっそり入れ替わるんです」 「日本でかつて若者の盛り場だったのは浅草で、新宿になり、渋谷になりましたが、浅草や新宿が廃れたりはしないわけです。ところが韓国では、かつて若者の街だったところがさびれ、トレンドのお店もどんどんなくなって、若者が一斉に同じ場所に移ってしまう現象が繰り返されています。同じ地域に一気にトレンドが集中する傾向が、今回の出来事の背景にある可能性はあるように思います」
――なぜ韓国ではそうなるのでしょうか。
「難しいところですが、韓国ではサービス産業が成長過程にあり、勢いがあるので、一番伸びているところに一斉に集まることがありそうな気がします。同じ食べ物の店が同じ地域に出店するようなかたちで、トレンドが集中する。梨泰院ではここ数年でナイトクラブがものすごく増えて、横の連携もない状態で営業していた。場合によっては違法営業もあった」
「ハロウィーンで集まった若者は、自分は行きたいと思っているイベントに行くために進もうとしただけなんだけど、気づいた時には引き返せなくなっている。結果として大きな事故につながった可能性があります」
――日本社会はどういう状況ですか。
「日本はいろいろな所に若者…