揺れ動く経済情勢を日本企業はどう展望しているのか。朝日新聞社では春・秋に主要企業100社へ景気アンケートを実施しています。物価高の影響や賃上げの取り組みなどについて、経営トップたちの視点を紹介します。
朝日新聞の主要100社へのアンケートで、6割の企業が燃料や原材料費の高騰に懸念を示した。円安や資源高を背景に原材料価格が高騰しているが、値上げが不十分とした企業も5割となった。米国経済の先行きにも不安感が高まっている。
調査は春秋の年2回行っている。今回は11月14~25日に実施した。
国内景気の懸念材料を二つまで選んでもらったところ、最も多かったのが「原油・原材料価格の上昇」(59社)。燃料、原材料費への危機感は根強い。
包装フィルムなどを手がける東洋紡では、企業収益を直撃。プラスチックの原料「ナフサ」は1年で1・6倍に、石炭は数年で数倍に上がった。2022年度の上半期は前年比で110億円のコスト増という。竹内郁夫社長は「価格改定を進めているが、燃料分の値上げが追いつかない」と価格交渉の厳しさを語る。
アンケートでは、エネルギーや原材料の値上がり分を商品やサービスの価格に上乗せできているかを聞いたところ、「一部を転嫁しているが不十分だ」が50社を占めた。
ロイヤルホールディングス(HD)の阿部正孝社長は「全ての原材料が上がっており、想定外。値段が上がるスピードが早く、コスト上昇分は全ては吸収できない」。
三菱ケミカルグループのジョンマーク・ギルソン社長は「日本特有だが、過去30年間ずっと値上げを経験してこなかったので、非常に抵抗がある。値上げにはかなり交渉が必要で、時間がかかっている」と明かす。アルプスアルパインの栗山年弘社長も「BtoB(企業間取引)の製造業は交渉で価格が決まるため、自分では決められない」。
消費者は値上げに敏感
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