「快適な生活」の裏に潜むリスク 外国人社長が語る日本経済の弱点

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聞き手・上地兼太郎
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 今年、外国為替市場円相場は一時1ドル=150円台をつけて、32年ぶりの円安水準になりました。円安が進めばその分、日本からの輸出品は外国の顧客にとって安くなるので、「円安は輸出産業にとってはプラス」と長らく言われてきました。ですが、化学大手の三菱ケミカルグループ(7月に三菱ケミカルホールディングスから社名変更)のジョンマーク・ギルソン社長(ベルギー出身)は「そんなことはない」と言い切ります。その理由を聞きました。

 ――円安が進むと、業績にはどう影響するのでしょう?

 「円安は私たちの業績に直接、影響します。ドルに対して10円、円安が進めば、収益が年間で130億円上ぶれします。今年度は、為替変動による増益額は100億円程度と考えています」

 「これが直接的な影響です。間接的には、円安が進むと原材料の価格が上がり、インフレが日本で進んでしまう。そうすると、日本国内でモノの需要が下がってしまう。世界全体でみれば、海外での売上高が為替の要因で膨らんだとしても、国内需要の減少で、ある程度は相殺されてしまうのです」

「このインフレ状況は、(景気の拡大をともなう)『真のインフレ』ではない、と私は考えています。今のインフレは、輸入されている原料の価格(高騰)によって引き起こされているインフレだと思います。『生産量が伸びているからインフレだ』ということではなく、日本の需要をみてみると決して強くはなく、懸念すべきだと思っています」

値上げに抵抗がある日本

――円安は決してプラスではない、と。

 「現在と過去の円安状況には…

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