第4回欲しいモノには妥協しない 井上道義が得た「オーケストラの本質」

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 どういうのが良いオーケストラか、一言では言えないけど、よかった時に拍手するとか、隣同士で「今の、いいね」って笑顔で目配せするとか、そんな風に楽員同士でポジティブなコミュニケーションがとれるオケとはいい音楽をつくれることが多い気がするね。

 《アマチュアや子供たちのオケをこそ、そんな風に育てたい》

 ひとり、またひとりと楽員が演奏をやめて舞台を去っていくハイドンの「告別」を京大オケとやった時、学生たちが自主的にいろんなことをやり始めたのは面白かった。「部活やーめた!」って舞台上で本分の勉強を始めたり、隊列を組んでラインダンスをしながら去ったり。「告別」って、名前は何だか悲しげだけど、実は、侯爵の別荘に長く滞在させられている楽員たちに休暇を!って訴える楽しい曲なんだ。学生たちの遊び心が爆発し、そんな作品の本質をおのずととらえちゃったんだね。

指揮者井上道義さんが半生を振り返る連載「一生、指揮者やってみた。」。全4回の最終回です。

 子供たちのオケも、もう20年ほど定期的に振ってます。むしろ、僕の重要なエネルギー源です。

 《それが千葉県少年少女オーケストラ。県内の小中高校の生徒を集めた団体で、元音楽教員、佐治薫子(87)が1996年に創設、国内最高レベルに育て上げた》

 いろんな年代や家庭環境の子供たちが一緒になり、学校の枠を超えて育て合っている。上の子は下の子を教え、下の子は上の子の演奏に憧れ、自分もうまくなろうと試行錯誤する。結果として、子供たちが人間として成長していく。オケって、大人にとっても子供にとっても人生の学校なんです。

 ショスタコービチ生誕100…

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