子どもが車内に置き去りになり、熱中症などの危険にさらされる事態を防ごうと、メーカー各社が安全装置の開発・生産を急いでいる。
欧州ルクセンブルクの車載センサーメーカー、IEEは草分けとして、2020年に量産化した。
きっかけはアメリカ
バス向けに開発を始めたのは17年。「米国で、車内に置き去りにされた子どもの熱中症事故が社会問題になっていたのを知ったのがきっかけだった」と、最高経営責任者(CEO)のポール・ショックメルさん(60)は言う。
IEEは自動車向け部品センサー開発・製造のスタートアップ企業として1989年、3人の技術者らで創業。エアバッグの誤作動などを防ぐセンサーやシートベルト着用を促す警告装置などの開発を進める傍ら、子どものための安全装置開発にも90年代から乗り出した。
ショックメルさんはドイツのカイザースラウテルン工科大学で修士号を取得後、友人に誘われて95年に入社。エアバッグによる子どもの圧迫事故を防ぐためのチャイルドシート検知センサーの開発・改良などにも携わった。
2014年に欧州自動車部品工業会(本部・ブリュッセル)のCEOに就き、いったん会社を離れたが、退任した16年に再入社し副社長になった。
その頃、米国で、子どもの車中の熱中症事故が社会問題になっていた。米NPO「キッズ・アンド・カー・セーフティー」によると、その死者数は1990~2016年に816人に上っていた。
「テック企業として、技術面で解決策を考えられないだろうか」。親の会や警察にも話を聞きながら、17年から開発を進めた。
義務化にもかかわらず…
米インディアナ州ではすでにスクールバスへの安全装置が義務づけられていることがわかり、アラン・シューマッハ最高技術責任者(CTO)らと調査した。すると、義務化にもかかわらず、09~21学年度に子どもの置き去りが274件起きていたことがわかった。
同州が義務化したのは、IE…