福音館書店、子供の目線で70年 「ベストセラー作らなくてもいい」

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田中瞳子
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 絵本・児童書の出版社として数多くのロングセラーを生み出してきた福音館書店は、今年創立70周年を迎えた。創業時から編集長を務めた同社相談役の松居直(ただし)さんは、11月に96歳で死去。亡くなる2カ月前には、過去のエッセーをまとめた自伝『私のことば体験』を刊行した。戦後の絵本づくりをリードしてきた編集者が拓(ひら)いてきた70年、次の時代に引き継がれていく哲学を、松居さんが自伝に残した言葉とともに考える。(田中瞳子)

「生きること」テーマに

 〈知らない世界へ飛びこむことは「生きること」で、抵抗はありませんでした〉

 

「生きること」が松居さんにとって最大のテーマであり続けた。18歳で敗戦を迎えるまでは、死ぬために生きていた。戦争が終わり、頭に浮かんだのは「死ななくてもよくなった」ということだった。

 敗戦の6年後、松居さんは福音館書店の前身となる金沢の書店「福音館」へ入社した。後に義父となる佐藤喜一社長から誘われてのことだった。1952年2月に出版社「福音館書店」が創業。東京へ拠点を移した。出版も編集も知らずに飛びこんだ世界で、松居さんは初代編集長となった。

 53年に親向けの月刊誌「母の友」が誕生する。創刊のことばは「世のお母さん方の毎日はあまりにも忙しい」。忙しい母親たちが生きる力を得られる雑誌をめざした。

 創刊号には「よい母となるた…

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