稲葉延雄氏は日本銀行時代、金融政策を担当する企画部門の中枢を歩む日銀きってのエリートだった。担当した企画課長や企画担当理事のポストは、かつて福井俊彦氏や白川方明氏ら歴代総裁も歩んだコースだ。一時は、将来の総裁候補となりうる有望株に名前があげられたこともある。
金融理論に詳しい実務家ではある。だが単なる調整型リーダーというわけでもなかった。常識にとらわれず異なった角度からモノを見て考えることを好み、上司や部下、取材する記者との激しい議論もいとわない。そんなタイプだ。
日銀退任後はリコーの取締役会議長を務め、企業経営の実績や大組織のガバナンス経験を積んでいる。
財界活動にも熱心だった。経済同友会では委員長ポストなどに就いて、なかなか進まない財政再建や社会保障改革について政府への提言をまとめることに注力した。
古巣日銀の異次元緩和に対し…