坂口安吾、知られざる探偵小説 名作「不連続殺人事件」の15年前
野波健祐
昭和の無頼派作家、坂口安吾(1906~55)がデビューまもない時期に書いた「探偵小説」の存在が明らかになった。ミステリー史に残る安吾の名作「不連続殺人事件」(48年)より15年も前の作品で、若い頃からの探偵小説への興味がうかがえる貴重な資料だ。
見つかったのは400字詰め原稿用紙で30枚程度の短編「盗まれた一萬圓(まんえん)」。週刊新聞「東京週報」の1933年10月15日号に掲載されたが、全集などに収録されず、存在を知られないまま埋もれていた。表紙に安吾の名とともに「探偵小説」とあるとおり、旧家にあった1万円の大金がこつぜんと消え失せるという謎に始まり、語り手の医師が「こゝから愈々(いよいよ)名探偵の活躍となるのだ」と捜査に乗り出す物語になっている。
安吾は31年に「風博士」な…