【動画】ケニア南部にあるアンボセリ国立公園やその周辺には、数多くのゾウなどの死骸が転がっていた=遠藤雄司撮影
2歳の子ゾウがひざから崩れ落ちたのは、11月12日午前6時ごろのことだった。
母乳が必要な年齢なのに、母ゾウの姿はない。
【連載】枯れるアフリカ 気候危機の「犠牲者」
アフリカ北東部が、気候変動の影響とみられる深刻な干ばつに襲われています。気候危機の最前線で何が起きているのでしょうか。ソマリアとケニアの現状を報告します。
草陰から様子をうかがっていた2頭の雄ライオンが躍り出て、子ゾウの背中と前脚に飛びかかった。
アフリカ最高峰のキリマンジャロ(5895メートル)をのぞむ、ケニア南部カジアド郡のアンボセリ国立公園。生息数の多さから「ゾウの楽園」とも呼ばれるその公園周辺に暮らすマサイ族のピーター・ケレアさん(34)が、その一部始終を目撃していた。
「子ゾウは前日、近くの沼に水を飲みに来ていた。その後、草むらに戻ろうとする途中で力尽きて動けなくなり、立ち尽くしていた。夜が明けてライオンに襲われた際は、ワァオオンと飛行機のような鳴き声をあげていた」
それが、孤独な子ゾウの断末魔となった。
周囲には、雄ライオンのうなり声が響くばかりだったという。
いったい、何が子ゾウを死に追いやったのか。母ゾウはどこへ行ったのか。
ケニア、ソマリア、エチオピ…