キャプテンの吉田麻也選手を先頭に、選手たちがピッチをぐるりと半周する。頭を下げ、拍手をし、サポーターに感謝を伝える恒例行事。相手選手はとっくにロッカールームへと去っている。クロアチア戦敗退後も、選手は涙で崩れ落ちそうになりながらピッチを回った。
「サポーターは主役にはなり得ない。それでも、選手たちからのリスペクトを感じる」。東京都の高田麻理子さん(40)は話す。
年間100試合を観戦しているが、ひいきのチームはない。唯一、サポーターになるのが日本代表だという。ハワイ生まれの祖父はアイデンティティーを重んじた。だが、日本にいるとあまり考えることはない。「ワールドカップ(W杯)は、日本人だと思える瞬間を4年に1度集まる仲間と共有する場所」
サポーターが繰り広げる一糸乱れぬ「ニッポン」コール。カタール大会でも、その応援が各国のサポーターの間で話題になった。
思いがエスカレートしてしまう事態も生じた。コスタリカに敗戦後、選手への誹謗(ひぼう)中傷がSNSに相次いだ。23歳の男性もその一人。試合直後の観客席から、1人の選手を名指しし、「戦犯」と投稿した。
「ドイツで見せた素晴らしい動きはなんだったんだと怒りがこみ上げてしまって」と振り返る。だが、選手がサポーターに感謝を伝える姿に自分の小ささを感じた。「一番悔しいのは選手なのに、なんで俺が否定できるんだろう」。投稿した言葉を削除した。
「4年後も必ずW杯に来ます」
大阪市出身の洪英高さん(28)は新型コロナウイルスの影響で経営する会社の収益ががくんと下がり、一時は気持ちも落ち込んだ。ドイツ戦はテレビで観戦し、「久々に素直な感動を覚えた」。
クロアチア戦に駆けつけた…