新たなナラティブ「未来可能性」に込めたメッセージ 山極寿一さん

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科学季評 山極寿一さん

 10月の終わりにドイツのポツダムで、私が所長を務める総合地球環境学研究所(地球研)とドイツのサステイナビリティ研究所が共催して3日間にわたるシンポジウムが行われた。間をつないでくれたのは「知識・学習・社会変革アライアンス」という国際的な組織で、テーマはこれまでの「持続可能性」などの概念に代わる新たなナラティブを考えようということだった。

 ナラティブとは「物語」とか「語り」と訳される。ストーリーには筋書きがあるのに対して、ナラティブは自由に語り継いで内容を変えることができるのが特徴だ。現在進行形でもあり、SNSなどで自由に拡散される。流行語などもナラティブのひとつと見なせるかもしれない。そのなかで、今回は私たちの生きる方向性を示すようなナラティブを取り上げた。持続可能性、地球温暖化、人新世、SDGs(持続的な開発目標)、生物多様性など、世界で共有されつつある概念である。

 実は私たちがその力の衰えを懸念しているナラティブが「科学」である。コペルニクスが地動説を唱えて世界観をひっくり返して以来500年も私たちは科学を信じてきた。科学の方法論は色々あるが、最近は世界で起こる現象を何らかの物差しで計り、数値化してその動きや影響力を示すことが主流だ。その数値により気候の変化を知り、健康状態を推測し、経済の動向を理解し、自分の可能性を予測して日々の暮らしを立てている。科学とその予測は生活に安全と安心をもたらし、より幸福な未来を約束するはずだった。

 しかし、最近は科学が予測し…

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