大相撲九州場所の千秋楽で、平幕の阿炎(28)は1差で前を走る単独首位の高安を破り、28年ぶりの優勝決定巴(ともえ)戦に持ち込んだ。
決定戦では、高安と大関貴景勝を連続で倒して初優勝を決めた。
2年前の謹慎処分を経て幕内に復帰し、1年で駆け上がった頂点だった。
その様子を、母の堀切早苗さん(58)はテレビで見守った。
「人ってこんなに変われるんだと思いました。4人きょうだいの末っ子で、甘ったれで泣き虫と思っていたのに……」
優勝直後のインタビューで、阿炎が涙を流した瞬間があった。
インタビュアーから、体調不良で九州場所中は入院していた錣山親方(元関脇寺尾)について尋ねられたときのことだ。
「(師匠も)喜んでいると思いますよ」と話を振られると、阿炎は手で顔をぬぐった。
早苗さんは言う。
「あの親方じゃなかったら今はないと、みんな分かっているので」
阿炎は、小学生で始めた相撲…