第15回「絵が見えないな」記者は衝撃を受けた 国宝の劣化発覚、石室解体へ

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清水謙司
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 色鮮やかな古代の遺産を子孫に護(まも)り伝えるために――。2004年6月、朝日新聞記者だった大脇和明(63)が手にした写真集には、そう記されていた。「高精細オールカラー決定版」とも。その写真集は、1972年に見つかった高松塚古墳の国宝壁画(奈良県明日香村)を管理する文化庁が監修、世に出した。古代史の中心舞台で文化財の取材にあたる大脇には、不可欠な資料だった。

 本体価格1万8千円の豪華本。「戦後最大の発見」と言われた宝の数々が収められていた。あるページに衝撃を受けた。西壁に描かれた神獣・白虎の写真。「絵が見えないな」。発見時はよく見えていたはずの輪郭が、ほぼなくなっているように感じた。「とんでもないことが起きている」

 複数の専門家や文化庁への取材を重ねて、劣化への疑念は確信に変わる。04年6月20日付1面で特報した。見出しは「消える白虎」。国を代表する文化財の劣化が明るみに出た瞬間だった。

 壁画は高松塚古墳の石室に描かれていた。関西助教授だった網干善教(故人)が発見して間もなく、文化庁が管理。74年に国宝になった。76年には古墳に保存施設が完成。壁画は非公開とされてきた。

 大脇は01年に奈良県の橿原支局に赴任した。高松塚古墳のある明日香村の文化財は重要な取材テーマだ。そんな中、古墳に隣接する「高松塚壁画館」の学芸員から、ある話を聞く。保存施設から燻蒸(くんじょう)処理のにおいが漏れてくる、人が頻繁に出入りしている……。だが壁画は非公開。直接確かめる手段がない。何か異常があるのか、半信半疑でもあった。追及を半ばあきらめかけていた。

 01年、石室と保存施設を連…

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