民主化が後押しする社会のイスラム化 多様性国家の「寛容」はどこへ
翁長忠雄
インドネシア国会で6日、結婚していないカップルの性交渉禁止を盛り込んだ刑法改正案が可決された。旧宗主国オランダの影響を受けた刑法は時代に合わないという機運が改正につながったが、背景には、イスラム教の価値観を社会生活に反映させようとする風潮がある。国の民主化がイスラム化を押し上げているという事情もある。
世界最大のイスラム教徒人口を抱えるインドネシアは、30年余続いたスハルト体制下で政党は三つに限定され、イスラム系の諸政党は一つにまとめられていた。軍や情報機関は宗教や民族間の対立が国家体制を揺るがすことを警戒し、過激な活動や組織を押さえつけていた。
1998年のスハルト体制崩壊後、民主化が進んだ。信教・言論の自由が提唱されると、政治、経済、社会規範にイスラム的価値観を反映させるべきだというイスラム系保守派の主張が、イスラム教徒が約9割を占める国民に浸透した。強硬派の排他的な主張も許容される風潮も広まった。
自由で民主的な選挙は、大統…