人生の「幸せの地図」、自分で描いて 夫の死と難病、乗り越えた先に
鈴木裕
50歳で夫を亡くした。ゼロから立ち上げた美容ビジネスが軌道に乗った矢先、病気に倒れた。苦難を乗り越えた江見知桂さん(62)がたどりついた境地は「手ぶらで生きる」ことだった。
江見さんにとっての1枚目の人生の地図は、両親がくれた。
三重県四日市市で会社を経営する家に生まれ、名古屋市の中高一貫の女子校・金城学院に通った。恵まれた環境だったが、16歳のときに父親を亡くし、母親が苦労を背負う姿を見た。「幸せに導いてくれると信じていた希望の地図を失ったようだった」
2枚目の地図は、祖母が用意し、夫が示してくれた。
父親とともに事業を切り盛りしていた祖母は、経営のアドバイスを求める来客が絶えない、自立した女性だった。
その「お眼鏡」にかなった眼科医の男性と、祖母に薦められるまま結婚。子どもにも恵まれ、開業医の妻、専業主婦として幸せな家庭を守る「地図」通りの人生を送るはずだった。50歳までは。
2011年に夫が急逝すると、人生が一変した。2億円の負債を抱え、クリニックは廃業した。資産があると思われていたせいか、いろいろな宗教の人たちが勧誘に来た。
そこで初めて考えた…