会期ぎりぎりまで続いた修正要求 立憲が模索した救済新法の着地点

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笹川翔平 鬼原民幸 寺田実穂子
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 世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の問題を受けて始まった被害者救済のための法整備が、与野党の歩み寄りにより結実する。被害者救済新法案の成立に向けて妥協点を探る協議は衆院採決を控えた最終局面まで続き、野党第1党の立憲民主党が与党の修正対応を評価した。

 立憲が法案に賛成する方針を決めたのは、会期末まであと3日と迫った7日だった。

 国会内であった党会合で、岡田克也幹事長が与党と修正協議をしていたことを説明。「(法案の)配慮義務規定に『十分に』という文言を加えるとの連絡があった。賛成してほしい」と呼びかけると、反対や異論はなかった。

 今回の修正協議は、岡田氏と自民党茂木敏充幹事長の間で行われた。2人は6日午後、都内で面会。複数の野党関係者によると、岡田氏は、立憲と「共闘」を進める日本維新の会の了解を得たうえで、配慮義務規定の実効性を高めるために「十分」という文言を加えるよう茂木氏に求めた。

 野党側はこれまで、マインドコントロール下での寄付の取り消しを盛り込むよう主張。一方、政府・与党は「マインドコントロールの定義は難しい」として、法案では、寄付の勧誘側に当事者の自由意思を抑圧しないようにすることを、配慮義務と定めた。野党側はならばと、配慮義務でなく禁止規定にすべきだと修正を求め続けた。

 これに対し、与党は譲歩。5日に、配慮義務規定が守られていない場合に「勧告」や法人名を「公表」できるようにする修正案を示した。それでも立憲内が収まらなかった。党内に「不十分だ」とする反対意見があり、さらに修正を求めていた。

 立憲にとって今回の修正案は、党内の反対論を説得するための「切り札」でもあった。安住淳国会対策委員長は記者団に、禁止規定ではないものの「コンセンサスが得られない場合、『十分』というのは一つの知恵。軽い言葉ではない。普通の配慮義務より格段に上がる」と指摘した。

 会期末直前まで続いた修正要求は、教団問題を抱える政府・与党の足元を見る野党側の戦略でもあった。

 衆参で過半数の勢力を持つ与党は、野党に頼らずに法案を成立させることができるが、野党側の理解を得ずに採決には踏み切らないとの判断が立憲にはあった。政府・与党が避けたい会期延長の必要性なども訴えて揺さぶりをかけ、1日の閣議決定後、2度の修正をもぎとった。

 一方、着地の頃合いも見計らった。

 会期末が近づくにつれ、維新は賛成の方向で検討を開始。立憲も賛成の態度を明確に示さなければ、共闘効果が薄まるとの懸念が党内にあった。これ以上の修正要求をすれば、被害者救済に向けた取り組みを遅らせているとの批判につながりかねないという判断もあった。

 与野党協議に臨んできた立憲の長妻昭政調会長は「賛成し、よりよい法律にしていく努力にコミットするほうが、被害者救済にはプラスだと判断した」と強調。党幹部の一人は「(国会の)議席数が圧倒的に少ない中で、ベストではないかもしれないが、ここまでよくやった」と述べ、修正要求の終結を宣言した。(笹川翔平、鬼原民幸

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