双子死産のベトナム人実習生、死体遺棄罪の有罪見直しか 最高裁

根岸拓朗
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 自宅で死産した双子の遺体を遺棄したとして、死体遺棄罪に問われたベトナム国籍の技能実習生レー・ティ・トゥイ・リン被告(23)の上告審で、最高裁第二小法廷(草野耕一裁判長)は検察側、弁護側の双方の意見を聞く弁論を来年2月24日に開くと決めた。弁論は二審判決を変えるのに必要な手続き。弁護側の無罪主張を退けて有罪とした二審・福岡高裁の判断が見直される可能性がある。

 リン被告は9日、支援団体を通じてコメントを発表。「最高裁の弁論開始の知らせを聞いて、とてもうれしいです。私の無罪主張に、最高裁の裁判官が耳を傾け、ぜひ無罪判決を言い渡してくれることを願います」と期待した。さらに「これまで私を応援してくれた多くの皆さんへの感謝と、無罪判決実現へ向けて今後ともよろしくお願いします」とした。

 リン被告は、技能実習生として熊本県の農園で働いていた2020年11月、自宅で双子を死産した。遺体をタオルに包んで部屋にあった段ボール箱に入れ、おわびの言葉などを書いた手紙も入れた。「妊娠がわかれば帰国させられる」と考えて周囲には相談しておらず、翌日に病院を受診して死産が発覚した。

 刑法の死体遺棄罪は「死者に対する一般人の敬虔(けいけん)感情」を害する行為を罰する。「遺棄」には、遺体を山中に捨てたり家の床下に隠したりするといった「作為」と、役所への届け出や葬儀をせずに遺体を放置する「不作為」という二つの考え方がある。

 裁判では、死産直後の被告の行為が、これらにあたるのかが争われた。

 被告側は、遺体を段ボールに入れたのは「埋葬のための安置だった」として罪は成立しないと主張したが、21年7月の一審・熊本地裁判決は「作為」と「不作為」の両方にあたると判断し、懲役8カ月執行猶予3年の有罪とした。死産から間もない被告が厳しい状態にあったと認めつつ、「まわりの人に助力を求めることはできたはずだ」と述べた。

 今年1月の二審・福岡高裁判決は、一審の判断を一部修正した。死産から発覚までの時間が1日半ほどにとどまり、通常の葬儀と比べて遅すぎるとはいえないため、「不作為」は認めなかった。

 ただ、「作為」にはあたるとして有罪を維持した。被告が遺体を段ボール箱に二重に入れ、テープで封をした行為が「遺体の隠匿にあたり、適切な時期に葬祭が行われる可能性を著しく減少させた」と判断した。量刑は軽くし、懲役3カ月執行猶予2年とした。

 弁護側は、上告して改めて無罪を主張するとともに、出産を経験した女性らから、無罪判決を求める127通の意見書を集め、最高裁に提出。「孤立出産に追い詰められた女性に必要なのは処罰ではなく、背景の分析だ」と訴えた。

 リン被告は今年4月の会見で「私は絶対に双子の子どもたちの体を捨てたり、隠したりしていません」と語っていた。(根岸拓朗)

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  • commentatorHeader
    せやろがいおじさん
    (お笑い芸人・YouTuber)
    2022年12月10日12時10分 投稿
    【視点】

    弁護士側の「孤立出産に追い詰められた女性に必要なのは処罰ではなく、背景の分析だ」という言葉に耳を傾け、外国人技能実習制度の抱える人権問題について考える必要があると思います。人が集まれば関わりができ、その関わりが深まれば恋愛に発展し愛情が芽生

  • commentatorHeader
    ドミニク・チェン
    (情報学研究者)
    2022年12月22日21時52分 投稿
    【視点】

    日本に住む外国人として、また、ベトナム人の祖母を持つものとして、レー・ティ・トゥイ・リンさんがいまも経験している悲劇には胸が締め付けられ、言葉を失いそうになります。彼女に起こっている理不尽はこの国で労働をしている40万人の技能実習生の人たち