「中国対抗」超えるアジア外交のすすめ 日本は自画像描き直すとき

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編集委員・吉岡桂子 聞き手
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 中国の台頭を受けて、日本のアジア外交が問われている。地域のパワーバランスが変わり、日本へ寄せられるまなざしも変わっている。経済成長への期待と安全保障上のきしみが同居するアジアで、日本はどんな役割を果たせるのか。戦後のアジアの国際政治や日本外交に詳しい上智大学教授の宮城大蔵さんに聞いた。(編集委員・吉岡桂子)

 ――「主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)」が11月、今年の議長国を務めるインドネシア・バリ島で開かれました。ウクライナ危機などで立場が異なりがちな先進国と新興国の対話の場にもなりました。

 「難しい国際情勢のもと、インドネシアがG20の首脳宣言をまとめあげたことは印象的でした。同国は、1955年のバンドン会議(第1回アジア・アフリカ会議)が開かれた場所です。インドネシアやインド、中国、エジプトなどの首脳が中心となり、植民地主義反対や平和的な共存をアピールしました。アジア・アフリカの多くは依然として植民地であり、支配する側とされる側の関係が色濃く残っていた時代です。日本にとっては戦後初の国際会議でしたが、自身は米国を中心とする自由主義陣営の一員か、アジアの一員か、という揺れがあった。今につながる課題です」

宮城さんは記事後段で、日本は自画像を描き直すときだと訴えています。アジアの側で抱く日本像と、日本人自身が考える日本のイメージには大きな落差があるようです。

 ――中国対抗を念頭に日米豪印で立ち上げた「QUAD(クアッド)」、米国主導の「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」など、アジアを舞台に新たなグループづくりが相次いでいます。

 「日本の戦後外交は、米国、中国、ソ連(現ロシア)など二国間が中心でした。地域全体を俯瞰(ふかん)する戦略は、基本的には良いことです。ただ、地域の安定や日本の外交全体にとって実のあるものになるかどうかは、まだ分からない」

 ――なぜでしょうか。

 「なんでもかんでも『中国対…

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    三牧聖子
    (同志社大学大学院准教授=米国政治外交)
    2022年12月14日11時13分 投稿
    【視点】

    岸田政権は「厳しい安全保障環境」を理由に、財源も定まらないまま防衛費増額の議論を先行させている。しかし仮に防衛費をGDP比2%にしても、係数をかけるGDP、すなわち経済成長が伴わなければ防衛力は十分に向上しない。宮城氏が指摘するように、アジ

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