第13回女性住職の道は開けてきたが… 夫の坊守が抱える孤立と「素通り感」
阿久沢悦子
住職の集まりは、住職である妻(37)に声がかかる。住職の配偶者である坊守(ぼうもり)の集まりも妻に声がかかる。
「自分は素通りされている。存在自体が認識されていない」
九州地方の寺で坊守を務める男性(39)は、旧来の性別役割とは逆転した状況の中で、もがいている。
「女性住職の道はかなり開けてきたのに対して、男性坊守の道はまだまだとても見えない」
「女性が声を上げやすくなったのに、今度は男性が声を上げにくくなっているなんて、どうしてこんなにもうまくいかないのか」
男性の登録は全国に5人
妻は寺に生まれ育ち、2017年、父の友人の住職の養子に入って、後継ぎのない寺を継いだ。ほぼ同時に男性と結婚。男性は当時、関西で会社員をしており、週末だけ九州に通う形で結婚生活が始まった。2人の子どもにも恵まれた。
コロナ禍で行き来が難しくなったのを機に、男性が九州に転居。今年3月に得度し、会社員を辞めて男性坊守になった。
本山の規定は「住職の配偶者…

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