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国民4割が「前向き」 なのに先進国ワースト 臓器移植法25年

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野口憲太
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 脳死となった人からの臓器提供を可能にする臓器移植法が1997年に施行され、今年10月で25年がたった。2021年までの直近10年の脳死下での臓器提供数は年平均約64件。法施行直後に比べれば大幅に増えたが、世界的な水準とは大きな開きがある。(野口憲太)

法改正 脳死提供は増えたけど…

 法施行から25年となる今年10月16日までの脳死下の臓器提供数は計878件。10年の法改正までは、書面などで本人の提供意思が確認できることが条件となっており、最大で年13件にとどまっていた。

 法改正により、本人の意思が分からなくても家族の同意があれば提供できるようになってから提供件数が増加。10年は32件、以降は年40~70件台で推移し、19年には最多となる97件となった。

 しかし、新型コロナウイルス感染症が流行した20、21年は、医療現場の負担増の影響で60件台に落ち込んだ。22年は10月末時点で77件と、19年に並ぶペースとなっている。

韓国の8分の1以下 世界と大きな開き 

 世界的にみると、日本の実績は極めて低調だ。各国データを収集する臓器提供・移植に関する国際レジストリー(IRODaT)によると、心停止後を含む19年の日本の提供件数は人口100万人あたりで0・99。米国約37、英国約25、ドイツ約11に比べると、大きな開きがある。同じ東アジア圏でも韓国8・68、中国4・43(18年のデータ)と差が大きい。

 日本臓器移植ネットワーク(JOT)によると、国内で移植を希望し登録している人は、計約1万6千人(22年10月末時点)。脳死下で97件の提供があり、480件の移植が行われた19年でも希望者の2~3%しか移植を受けられていない。

 脳死下の提供は増えたが、心停止後の臓器提供の件数は減り続けている。双方を合わせた「総数」はこの25年間で100件前後の横ばいのままだ。これまで心停止で提供されていたケースが脳死下に置き換わり、全体的な底上げにはつながっていないとの指摘もある。

提供の意思表示、わずか1割

 「日本の医療のレベルは高い水準にある。しかし、(脳死下での)人口あたりの提供数は欧米先進国だけでなく、アジアの諸国よりも低い。そのことを分析し、対応すべきだ」

 10月に名古屋市で開かれた日本移植学会総会では、臓器移植法制定に取り組んだ、小柳仁・東京女子医大名誉教授(85)のメッセージが会場で流されていた。

 21年度の内閣府世論調査では、約4割が自分が脳死と判定された場合、「提供したい」もしくは「どちらかといえば提供したい」と回答。家族の臓器提供の意思を「尊重する」「たぶん尊重する」と答えた人は計約9割だった。

 にもかかわらず、意思表示をしている人は計1割ほどしかいない。これが、臓器提供数が伸び悩む一因とされる。

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