10年前、ある高校の女子バレー部で監督を務めていた男性は練習中、選手にカツを入れるため、ビンタを繰り返していた。
スパイクで思い切り跳ばない。レシーブでボールを全力で追いかけない。そんな時、練習を止め、コートに入り、選手の元へ向かった。「(頑張るのは)ここやろ」と怒鳴り、右の手のひらを少し斜めにして、頰をかすらせるようにたたいた。ビンタから逃げたら、もう一発たたいた。体育館にパチンという音が響く。泣き出す選手もいた。
「一発殴ると、選手の真剣味が増した。『全力でやれ』と言っても、自分を許し、さぼってしまう時がある。目を覚まさせたかった。ビンタをする場面を作り、選手の体を休ませる狙いもあった」
地方の大会で優勝し、全国大会に出場したこともある。春高バレー(全日本高校選手権)出場を目指し、必死だった。
そんな時、桜宮高校の事件が起きた。
自分にも影響が及んだ。
しばらくして、教育委員会か…
- 【視点】
当連載では、教員が暴力やパワハラ指導を行った際のこころの動き、自分の罪に対する振り返りがリアルに描かれています。非常に興味深く拝見しました。私は10年前の12月23日に大阪市立桜宮高校のバスケットボール部員が自死した事件のノンフィクション
- 【提案】
「加害側」だったわけですから、勇気をもって取材を受けてくださったことに、敬意を表します。 「体罰は最低の方法。指導者の敗北だった」 いまなお、暴力と決別できないでいる現場の指導者に、届いてほしい言葉の数々です。 選手だった自分