第3回ビンタ繰り返したバレー部の指導者 やめた理由と今も残る心の痛み

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木村健一
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 10年前、ある高校の女子バレー部で監督を務めていた男性は練習中、選手にカツを入れるため、ビンタを繰り返していた。

 スパイクで思い切り跳ばない。レシーブでボールを全力で追いかけない。そんな時、練習を止め、コートに入り、選手の元へ向かった。「(頑張るのは)ここやろ」と怒鳴り、右の手のひらを少し斜めにして、頰をかすらせるようにたたいた。ビンタから逃げたら、もう一発たたいた。体育館にパチンという音が響く。泣き出す選手もいた。

 「一発殴ると、選手の真剣味が増した。『全力でやれ』と言っても、自分を許し、さぼってしまう時がある。目を覚まさせたかった。ビンタをする場面を作り、選手の体を休ませる狙いもあった」

 地方の大会で優勝し、全国大会に出場したこともある。春高バレー(全日本高校選手権)出場を目指し、必死だった。

 そんな時、桜宮高校の事件が起きた。

 自分にも影響が及んだ。

 しばらくして、教育委員会か…

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    島沢優子
    (ジャーナリスト・チームコンサルタント)
    2022年12月20日20時13分 投稿
    【視点】

     当連載では、教員が暴力やパワハラ指導を行った際のこころの動き、自分の罪に対する振り返りがリアルに描かれています。非常に興味深く拝見しました。私は10年前の12月23日に大阪市立桜宮高校のバスケットボール部員が自死した事件のノンフィクション

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    中小路徹
    (朝日新聞編集委員=スポーツと社会)
    2022年12月19日17時10分 投稿
    【提案】

     「加害側」だったわけですから、勇気をもって取材を受けてくださったことに、敬意を表します。  「体罰は最低の方法。指導者の敗北だった」  いまなお、暴力と決別できないでいる現場の指導者に、届いてほしい言葉の数々です。  選手だった自分