「僕しか描かない」かけがえのない日常 マンガ家が貫く流儀
戸田拓
市民会館の映画会。給食の思い出。城山から見た製紙工場の煙突。遊ぶ我が子に注ぐまなざし。
何げないけれども、かけがえのない人生の場面を集めた短編集「急がなくてもよいことを」(KADOKAWA刊)は昨年、マンガ評論家、編集者らが選ぶ「THE BEST MANGA 2022」で13位になった。愛媛県出身のマンガ家ひうち棚(たな)さん(42)は「自分が描かないと取りこぼされるような景色を選んだ」という。
――旧川之江市(現四国中央市)の出身で、筆名は瀬戸内海の燧灘(ひうちなだ)が由来とか
小学校の校歌の「ひうちなだから そよ風が」という歌詞を、ずっと「ひうちだな」と間違って歌っていたのが我ながら面白くて。同人誌で香川県人の先輩と共作したペンネーム「山坂ヨサンセン」は、「(JR)予讃線」の響きが気に入りました。
――現在は兼業作家として活…