「夜、鳥たちが啼く」 評・柳下毅一郎 視線で見せる、微妙な関係

有料記事

柳下毅一郎・映画評論家
[PR]

 かつて才能を高く評価されていたが、今は鳴かず飛ばずの作家、慎一(山田裕貴)。その家に、幼い息子を連れたシングルマザー裕子(松本まりか)がやってくる。先輩の妻として顔見知りだった裕子が離婚したため、慎一が自宅に招いたのである。慎一は庭にあるプレハブの物置を自室として使い、母屋を母子に明け渡す。かくして微妙な関係の3人の半同居生活がはじまることになる。

 「そこのみにて光輝く」「海炭市叙景」など映画化もされている夭折(ようせつ)の作家佐藤泰志が原作である。ともに訳アリの男女がはからずも同じ家に住むことになり、微妙な関係が煮詰まっていく。煮え切らない2人の感情が上下し、その頂点が物語でもクライマックスとなる。かつてのロマンポルノ映画のような、男女の感情の機微を描いたドラマだ。

 鬱屈(うっくつ)をためこんで理不尽に暴力を爆発させる慎一も、男にうんざりしている裕子も、関係をはじめたいわけではない。だが、小さな出来事の積み重ねが2人を容赦なく近づけていく。

 監督は、快作を連発して今年…

この記事は有料記事です。残り230文字有料会員になると続きをお読みいただけます。
今すぐ登録(春トクキャンペーン中)ログインする

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません

春トク_2カ月間無料